令和2年第1回定例会一般質問(2月27日)

自由民主党・県民会議 太白区選出 わたなべ 拓

【目次】

  1. 宿泊税は撤回を
  2. 県美術館は現地存続を。県民ホールと集約するならMICE(コンベンション)施設を
  3. 県庁正規職員として「就職氷河期世代」採用を

① 畏くも 天皇陛下におかせられましては、2月23日に60歳の御誕生日をお迎えになられました。一国民として、謹んで御慶祝申し上げます。

② さて、2月22日は竹島の日でした。韓国による不法占拠から68年が経ちました。郷土の先人 大槻文彦先生は、早くも明治11年・1878年の時点で『竹島松島の記事』を著し、竹島の危うさを指摘することで世論の喚起を試みました。竹島は我が国固有の領土であります。 領土問題には格別の御造詣をおもちの知事には、本県教育においても、是非とも領土教育に御注力いただきたくお願い致します。

③ 次に、新型コロナウイルス感染により亡くなられた方々に謹んで哀悼の意を表しますとともに、感染された方々、不安と困難の中におられる方々に、心よりお見舞い申し上げます。

 あわせて、新型コロナウイルスの蔓延するクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の船内で3700人もの検疫業務に当たられた政府職員、DMATなど医療関係者、自衛隊の皆様の献身的な努力に心から敬意を表します。
 当局には、政府の「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」に基づき、新型ウイルス流行の規模を抑え、重症者発生を最小限にとどめるための危機管理について、主導的役割を果たしていただけますよう、議会人としても超党派で協力して参りましょう!

① 宿泊税

 さて、先の自由民主党・県民会議 高橋伸二 会派会長による代表質問に際して、知事は、「修学旅行や部活動など18歳以下の児童・生徒が学校活動で利用する宿泊を宿泊税の課税対象から除くべき」との提案を全面的に受け入れ、課税免除を言明されました。修学旅行などの課税免除について、唯一の先行例である京都市より、さらに広範に、クラブ活動や、体育のスキー合宿なども免除の対象に含めるなど先進的な内容です。スポーツ少年団の活動をさらに免除対象に含めるのかは今後の課題であるとしても、これで本県が注力する教育旅行への冷や水とならずにすみそうです。知事の英断に心から敬意を表します。
 知事がおっしゃるように、人口減少の進行による県内経済縮小を補うべく、成長産業である観光に活路を見出すため、「東北観光復興対策交付金」や「復興関係基金」など震災対応予算に替わる財源を確保する必要性は誰しも理解するところです。知事の中長期を見据えた将来世代に対する強烈な責任感には、心から敬服するものです。知事は立派な政治家です。問題は、まずもって、税額です。
 宿泊税の先行例をみると、東京都、大阪府、京都市、金沢市と、一流の観光先進地であり、この4月から宿泊税を導入する福岡県と福岡市・北九州市にしても同様であります。先行自治体は、観光地としての圧倒的な実力を背景に宿泊税を導入したものであり、観光地としてはまだまだこれからの本県がボリューム層となる20000円以下の宿泊価格帯では全国最高額となる300円の宿泊税を課すのは、いかなる見立てによるのでしょうか。いささか強気に過ぎると考えますがいかがでしょうか。300円の算定根拠は、所要の観光事業規模を32億円ほどとして、本県の一年分の宿泊数1000万人泊×300円で財源を捻出するとの概算にあるようですが、そもそもの事業規模は適正なのでしょうか。ちなみに、大阪府は、人口が宮城県の4倍で、宿泊者数は年間3500万人泊と東北6県とほぼ同じで、本県の3.5倍の規模。ところが、世界的観光地である大阪府の「観光客受け入れ環境整備」事業費は年間16億円と本県予算のちょうど半分です。
 本県の施策の内容をみると、アイドルやマンガ・アニメを前面に押し出したPRとなっていますが、本県の観光の現実に即した施策なのでしょうか。また、その狙いは十分に達せられたのでしょうか。これまでのアイドルやアニメを起用した本県の観光施策は一過性のプロモーションに過ぎないとし、投資効果を疑問視する声も少なくありません。そうしたなかで、来年度当初予算を見れば、「通年観光キャンペーン推進費」として、またもやキャラクターを起用した通年キャンペーンに2億円が計上されています。

Q 事業内容を精査すれば、事業費総額はさらに抑えられ、それにともない所要の宿泊税額も下方修正可能なはずです。知事の所見を伺います。
 本県と並行して宿泊税を検討していた沖縄県、そして奈良市、長崎市などは、新型コロナウイルス感染拡大で観光業への影響が出ていることを踏まえ、宿泊税導入を延期することに決しました。いずれも観光の「強者」である自治体が一致して宿泊税導入を延期するなかで、さらには消費増税による消費の冷え込み、台風19号による客離れからの回復を見ない現状で、本県のみが突出して宿泊税を導入することは、いささか無謀といわざるを得ません。時期が悪すぎます。
Q そもそも、多方面から「調整不足」「拙速」との批判がある中です。心を鬼にして申し上げますが、検討中の他自治体と足並みを揃え、宿泊税導入を一旦延期し、宿泊業者や仙台市など関係者と十分調整を図るべきではないしょうか。「戦略的撤退」は何ら恥ではありません。「終局的勝利」のためです。知事の所見を伺います。

A 復興関連税源の減少をふまえ、令和3年4月の宿泊税導入が最善。
本質問(2月27日(木))の週明け3月2日(月)に、村井知事は「宿泊税白紙撤回」を表明。

 本県のインバウンドにも資する重要な観光コンテンツとして、慶長遣欧使節船 復元船サン・ファン・バウティスタ号が現存していますが、再来年にも解体の予定です。「復元船のあり方検討会」における議論、ならびに諸先輩議員の議論の蓄積を尊重したうえで、やはり解体するには惜しみて余りある復元船です。

Q 他方で、海洋国家日本国から船大工が消えようとしています。船材が強化プラスチックなどに切り替わり木造船需要が激減したからです。船大工の高齢化といっても我が国にはまだ200名ほどの船大工が存命です。財源はクラウドファンディング、ふるさと納税で募るなど、調達の余地もあるはずです。木造原寸大だからこその、かけがいのない価値を再評価する余地はないのでしょうか。当局の所見を伺います。

A 修復・保存は極めて困難。解体せざるを得ない。

Q 他方で、最悪でも、東京芸術大学が開発した高精度画像や3Dプリンターを駆使した文化財復元技術「クローン文化財」の技術を駆使して、実物大の質感もそのままのクローン復元船を作成するなど、後世へのレガシーとして恥ずかしくないものを検討する余地もあると考えますが、当局の所見を求めます。

A 繊維強化プラスチック製の4分の1サイズで復元する。

② 公共施設集約・複合化

 人口減少社会に見合った公共施設のストック適正化は、中長期の財政見通しに鑑みても、正しい取り組みの方向性であると知事の問題認識を共有するものであります。
 県有施設の規模適正化のため、重複・類似した機能を集約し複合化することで、延べ床面積を縮減しコスト削減につなげる構想には賛意を表したうえで、知事の美術館の「耐用年数」についての認識については、重大な事実誤認がおありではないかと危惧しております。
 知事は、「令和2年1月27日記者会見」において、美術館について「かなり古くなりました。築38年、40年近く経った施設ですから、躯体をかなりきっちりと整備してリニューアルする」他にも、「もうかなり古くなっていますので、ある程度、将来使える期限が限られてしまっている」と発言されました。
 また「令和元年12月4日、石田一也議員の一般質問に対する答弁」において、知事は「大規模な改修をしたとしても、遠くない将来に建て替えとなることは避けられない」「したがって、いずれもう築30年以上経っているので、あと10年、15年するとどっかに移さなくてはならないということになる」と発言されました。
 宮城県美術館本館は、1981年竣工で築39年、佐藤忠良記念館は1990年竣工で築30年の鉄筋コンクリート造(RC)ですが、公的施設の長寿命化の指標として用いられる日本建築学会の『建築物の耐久計画に関する考え方』「鉄筋コンクリート造り(RC)、鉄筋鉄骨コンクリート造り(SRC)の望ましい目標耐用年数」の指標によれば、「普通の品質の場合」は、物理的な期待耐用年数の代表値は「60年」です。
 しかし、鉄筋コンクリート造建物の寿命推計の権威である早稲田大学教授 小松幸夫氏に直接お話を伺いましたが、宮城県美術館は「これ以上ない最善の建物」であるため「高品質の場合」として評価すべきであり、その場合の物理的目標耐用年数は少なくとも代表値の「100年」より以上であるとの見立てをいただきました。また、前川事務所の元スタッフであり、1978年竣工の山梨県立美術館や佐藤忠良記念館を設計され、宮城県美術館の設計に際しては故前川国男氏の右腕として活躍された建築家 大宇根弘司氏にも直接御教示いただきましたが、小松教授と全く同じ所見で、専門家であれば宮城県美術館の耐用年数は少なくとも「100年」と評価するとのことでした。
 そうしますと、宮城県美術館は裕にあと60年は改修しながら使用できるわけであります。従いまして、知事が「遠くない将来に建て替えとなることは避けられ」ない、あるいは「あと10年、15年するとどっかに移さなくてはならない」との発言の前提が大きく崩れることになり、「あと10年、15年」での「建て替え」の必要性は、学問的には明確に否定されるのであります。

Q したがいまして、美術館の新築を是とする前提が大きく崩れるわけですから、耐用年数をあと60年も残す美術館の「新築」、必然的に「移転」についても、少なくとも「物理的観点」からは肯定できないといわざるを得ないのであります。この点、知事の所見を伺います。

A ①設備に関して更新が必要な状況で、抜本的な解決とはならない。②建物自体は堅固だが、相応の維持管理費用を要する。いずれ建て替えの議論は不可避なため、移転・新築(!)。← ①更新が必要なのは当然のこと。それが新築に比して過大であればともかく、そのような事情は存在しない。②建物が堅固であることは認めたものの、あと60年間も使用可能な建物の「建て替えの議論」など少なくとも40年後にすればよい話。以上、当局の答弁は著しく合理性を欠く内容。
 それでは、「物理的観点」はそうとして、「機能的観点」はどうでしょうか。本来要求が充たせないほど機能が陳腐化しているのかといえば、答えは否であります。『宮城県美術館リニューアル基本方針』で指摘されているように、経年的劣化は設備全般に見られますが、特に更新の必要が指摘されていた特別展示室屋上の防水については、平成30年度に8000万円をかけて改修済みです。平成26・7年には、みやぎ環境税3000万円を活用して照明をLED化しており、今後も定期的改修で十分に対応可能です。ちなみに、収蔵庫の空調は一般的には四六時中稼働を要するものですが、美術館の空調は通常の2/3以下、年間207日の稼働で足りるほど機能的に優れているのであります。したがって、「機能的」にも現状の美術館で問題はないようです。
 次に、「経済的観点」はどうでしょうか。そもそも、残余の耐用年数が60年もあるため、経済的にも移転は否定されるのは必定です。
 そのうえで、そもそも、移転・新築の場合の事業規模はどの程度をお考えなのでしょうか。これを示さねば、設備関係の定期的改修を勘案した「ライフサイクル・コスト」の試算ができず、現地存続と移転・新築のコスト比較ができません。仮に、‘06竣工の青森県立美術館(事業費100億円)、‘17年竣工の富山県美術館(事業費85億円)としても、移転・新築の方が事業コストがかさむのは自明です。たしかに、知事が指摘されるように「リニューアル基本方針」において「50~60億円」とされた概算事業費は過大とも考えられ、いはば「ドリームプラン」ベースの試算を20億程度まで見直す努力はあって然るべきと考えます。

A 試算は別項を参照。
 ちなみに、美術館は現地存続で長寿命化を施した場合でも、「公共施設等適正管理推進事業債」により事業費の27%までは交付税措置が可能です。  さらには、交通インフラの充実にも留意が必要です。現状で既に「ループル仙台」や地下鉄東西線「国際センター駅」など交通インフラが整備され、美術館が集客ルート上にあることは経済的には大きな加点要素です。周辺の自然「広瀬川・青葉山」と、文化施設(「博物館」「東北大学」「青葉山公園センター(予定)」「仙台城」)と文教地区を織り成す相乗効果も一定程度発揮しております。したがいまして、「経済的「経済的観点」からも、現地存続の場合に享受できる有形・無形の価値が優越しており、移転・新築を肯定することは困難であるといわざるを得ません。  一方で、特別展はともかく、通常展示の来場者数が著しく少数で入館料収入も3百万円ほどで僅少である、「敷居が高い」等の批判もあります。たしかに、この10年間の平均来場者数が20万人であるところ、直近2年間についてみれば11万人~13万人台と低迷しており、運営に改善の余地があることは明らかです。しかし、来客数の問題は「立地」ではなく、専ら運営など「ソフト」の課題であることには留意を要します。  最後に、「社会的観点」を検討しますに、まずもって宮城県美術館は前川国男建築の集大成とも目される事実に、重要な社会的意義が存するのであります。ちなみに、先行例の弘前市博物館(76年竣工)、福岡市美術館(79年竣工)は既に長寿命化のための大規模改修を終え、使用中です。京都京セラ美術館は築87年のRC造を大規模改修で再生し、この3月に再出発します。97年前になる大正12年・1923年建築の弘前れんが倉庫美術館も、リノベーションにより再生され本年4月に開館予定です。  我が宮城県はともすると新しいものに奔りがちで、古いものを大切にしてこず、スクラップ&ビルドのサイクルが短すぎるのです(ex)宮城県庁)。価値ある建造物を遺すことは文化の醸成そのものであります。価値ある建物を改修しながら息長く利活用していく成熟した在り方こそが、人口減少社会の時流にも適っています。

Q 以上を要するに、美術館は現地で存続し、福岡市美術館のように大規模改修により魅力を維持増加したうえで、PFI導入によりイベントや運営などソフト面の改善により稼ぐ施設へと再生することで観光的魅力向上に寄与する方が、「富県みやぎ」に資するものと考えますが、知事の所見を伺います。
(1)【県民会館・現地】  次に、県民会館移転について、「通常の品質」すなはち「期待される耐用年数を代表値60年」と前提して、県民会館を1「物理的観点」から検討しますと、築55年とたしかに古く。  2「機能的観点」に鑑みても、陳腐化が進んでいることは否めません。  3「経済的観点」から検討しても、敷地が比較的狭いことから新築がベターとも思えます。  次に、4「社会的観点」については、2000席のホールありきで話が進んでいますが、そもそも、人口減少社会において、仙台市と宮城県で、2000席のホールが2つも必要なのか疑問が拭えません。

Q そのうえで、どうしても作るということであれば、人口減少社会下の財政維持の観点から、せめて県市連携でひとつのホールを作るべきです。令和4年3月開館予定の「あきた芸術劇場(県・市連携文化施設)」(事業費211億円)は、県・市で集約・複合化した結果、4%の同種施設の延床面積縮減を実現しました。知事の所見を伺います。

A 県内には、2000席以上のホールは「仙台サンプラザホール」しかなく、県の需要調査や有識者の意見では、仙台市が整備する音楽ホールとは別に、県として2000席規模のホールを進めるよう求められた。県・市連携で一つのホール整備はない。← 歴史的な過ちを犯しつつある。後世に過大な財政負担をもたらさないか強く危惧する。

Q 仙台市で何度も公演を実施してきた全国区のクラシック興行の専門家からは、県民会館は収益力ある現在地から動かすべきではないとの声も届いています。ちなみに、県民会館東側に隣接する駐車場は現敷地のちょうど半分の面積で、時価15億円ほどと試算されます。定禅寺通りに面していないのが玉に瑕とはいえ、現敷地にこの駐車場敷地も加えて敷地面積が1.5倍になったとしたら、スペース狭小による客席やエレベーター、バックヤードの諸課題の解決が見込めます。もちろん、NPOなどを集約し複合化することも可能で、ホールとしての性能を増大させ、延べ床面積の縮減など複合化の実を得られる一挙両得の策とも思えます。現在地での存続も十分検討に値すると考えますが、当局の所見を求めます。

A 隣接地を取得したとしても、地形的に活用方法が限定され、現行座席数を下回るホールしか建設できないので、取りえない。
(2)【県民会館 移転・新築】
 仮に、県民会館を仙台医療センター跡地に移転するとして、多目的ホールとNPOだけでは、真の相乗効果は得られません。多目的ホールと相性が良い施設はなんといっても「展示場」であります。観光庁の統計によりますと、我が国のMICEによる経済波及効果は1兆590億円で、国際会議は前年比で15%増と成長分野です。平均的インバウンド客の国内消費額は15万円程度であるところ、MICEに参加するビジネス・インバウンド客の平均国内消費額は25万円程度と、客単価が10万円も高いのであります。仙台市の所在する本県のMICE需要には、まだ伸び代があります。現に、第2回「県有施設再編等の在り方検討懇話会」においても、堀切川座長や赤石委員から、仙台では大規模コンベンションの施設が不足しており、機会損失が生じているとの指摘があります。
 MICE施設を見てみますと、①「仙台国際センター」は立地に優れているものの、施設的には「大ホール1000席」「展示場3000㎡」と必ずしも大きくありません。②本県が所管する「夢メッセみやぎ」は展示棟こそ7500㎡と東北最大の延床面積を誇るものの、会議棟のキャパシティは500名にとどまり、なんといっても交通が不便です。
 そこで、「仙台医療センター跡地」に2000席の県民会館を作るのなら、施設間の相乗効果を得られるMICE誘致用の大展示棟をこそ併せて整備すべきです。国際会議をホールで開催したうえで、隣接の展示場で大規模イベントを実施できます。さらには週末には数千人規模のライブにも活用でき、使い勝手のよい稼ぐハコモノになり最も相乗効果を得られる施設となります。ちなみに、福岡市の「マリンメッセ福岡」の利用率は90.4%で、展示会利用とコンサートなど興行利用の割合は共に40%です。
 たしかに、展示棟整備は延べ床面積縮減とは背馳しますが、コンベンション需要やライブツーリズムの受け皿ともなり、人口減少下で、地域経済の持続的発展にも貢献し得る有効な投資と考えます。最新の熊本市の試算によれば、MICE施設の費用対効果は10年で「1.54」、20年で「2.31」と、十分にペイできます。
 財源は、「社会資本整備総合交付金」の活用など、検討の余地もありそうです。

Q 県民会館の移転・新築にあわせ、最も相乗効果を期待できるMICE用の大展示場を整備すべきと考えますが、知事の所見を伺います。

A 仙台医療センター跡地は、仙台市都市計画で「大規模集客施設制限地区」に指定されており「劇場・店舗・展示場等」の床面積が1万㎡以下に規制される。2000席規模の県民会館ホールや新たに飲食・物販スペースも整備するため、大展示場併設は困難。

③ 就職氷河期世代支援

 就職氷河期世代とは、概ね平成5年から同16年までに学校卒業期を迎えた世代(高卒で34~45才、大卒で概ね37~48才)ですが、私は正に当該世代に属する者です。バブル崩壊後の景気後退期に企業が新規学卒者の採用を大幅に手控えた影響を受けて、正規雇用を希望しながらも不本意ながら非正規雇用に甘んじている方や就職を希望しながらも長期間無業状態にある方、「社会的ひきこもり」状態で生活に困難を抱えている方が少なくありません。

Q 「平成30年労働力調査」によれば、35~44才の人口1700万人中、不安定な就労状態にある方は50万人いるそうです。本県における、就職氷河期世代(34歳~48歳)人口は何十万人なのか、またそのうち不安定就労の状況にある人など、正規雇用を希望する支援対象は何人に上るのでしょうか。

A 本県就職氷河期世代人口は31万5千人。そのうち正規雇用を希望する県内の要支援対象者は1万8千人。

Q 政府においては、「就職氷河期世代支援プログラム」に基づき、氷河期世代の正規雇用者を令和4年までに30万人増やすことを目指し、3年間で650億円の財源を確保し集中的に取り組むとしています。全国のハローワークに専門窓口を開設し就職から職場定着まで一貫して支援するそうですが、本県でも本年度予算で新規に「就職氷河期世代支援費」5000万円が計上されました。具体の支援内容につき伺います。

A 福祉部門と連携し求職者のワンストップ相談会の開催予定。無業者に県独自の就業体験支援制度を創設する。

Q 埼玉県は、「就職氷河期世代150人を正社員にする」ことを目標に掲げる「30代・40代でも大丈夫!正社員になろうプロジェクト」の一環として、氷河期世代に特化した国内最大級の合同企業説明会を昨年11月15日に実施し、県内企業81社、氷河期世代223人が参加しました。これまで正社員採用に至るのが難しかった氷河期世代に特化して、人手不足の地元企業と非正規の青年層をマッチングし実績を挙げています。
 本県においても埼玉県と同様の取り組みを実施する余地があると考えますが、当局の所見を求めます。

A 埼玉県の取り組みを参考に、企業を集めた就職説明会を開催する。

Q 長期間無業やパート・アルバイト経験のみの方には、OJTで適性・能力をすり合わせるなど教育訓練を要する一方で、研修等に専念すれば直ちに困窮状態におちいる人も少なくないなど課題がありました。
 ここで、東京都が行っている社会人インターンシップ「東京しごと塾」の取り組みは参考になります。同事業では、受講生は2か月間にわたり「就活支援金」として日額5000円の支給を受けつつ企業訪問をし、グループワークで企画を考え、プレゼンを行うなど職務実習を通してビジネススキルを身に付け、企業との相性も見極めることを通じて、中小企業の正社員雇用に結びつけています。平成29年度実績で159人が受講し、うち116人が正社員となりました。本県でも参考になる取り組みと考えますが、当局の所見を伺います。

A 東京都の取り組みを参考に、就業体験支援制度「おしごとチャレンジ制度」を創設する。

Q 1月23日付けで、総務大臣から都道府県知事宛てに、氷河期世代を対象とした地方公務員の中途採用の協力依頼が発出されました。これに先がけて、昨年11月25日には、兵庫県宝塚市が、氷河期世代を対象とした正規職員採用に踏み切りました。3人程度の募集に対し、9月の一次試験は1635人が受験し、最終面接を経て4人が採用されたそうです。倍率は実に400倍。全員が40才~45才で、無職や、アルバイトで2人の子供を育てるシングルマザーも含まれるそうです。
 広域自治体においても、兵庫県では一般事務職、土木職など計10名程度の募集に対し、1431人の応募があったそうです。他にも、東京都、神奈川県、愛知県、埼玉県、富山県、岐阜県、滋賀県、和歌山県、三重県、鳥取県、北海道など12都道県で氷河期世代を対象とし、その多くが経験不問の採用を表明しています。
 ちなみに、本県「知事部局労務別年齢構成」を見ると、最少の72名の年齢層である38歳を底辺にしたキレイなM字型の職員年齢構成となっており、氷河期世代が行革による定数削減・採用抑制のあおりを受けたことが如実にわかるのであります。ちなみに、27歳の層は38歳の倍の133人ほどもいます。いまが、インバランスな年齢構成を是正するチャンスです。なにより、社会のひずみを受けて他の世代よりも苦労した氷河期世代当事者だからこそ、「他人の辛さ、弱さ」を我が事として理解し県民に寄り添うことができるのではないでしょうか。
 本県はSDGs推進を標榜していますが「誰一人として取り残されない社会の構築」がその本質だとすれば、就職氷河期世代という「ロストジェネレーション」氷河期世代に特化して、苦労を重ねてきた意欲ある人材を宮城県職員として採用すべきと考えますが、知事の所見を伺います。

A 本県でも、任期の定めのない一般職(任期付きではない正規職員)について、就職氷河期世代を対象とした採用試験を実施する。
 以上を以て、壇上からの質問と致します。ご清聴、誠にありがとうございました。